雨の嵐山-「嵯峨散歩」1


京都、大阪、神戸と3都をめぐった。
京都では『街道をゆく』「26嵯峨散歩」の地をまわろうとしたのだが、雨に降られてわずかだけになった。

第1日 京都嵯峨 [渡月橋 西山艸堂 松尾大社 心斎橋(泊)]
第2日 大阪 [司馬遼太郎記念館 喫茶美術館 心斎橋(泊)]
第3日 神戸 [芦屋市立美術博物館 マキシン 南京町・老祥記 北野・英国館]

* 「嵯峨散歩」のそのほかのところは後日出直した。→ [桜の洛北、漱石の嵐山-「洛北諸道」と「嵯峨散歩」2]
* 第3日神戸は→ [みなとまちを歩く-「神戸散歩」1]

第1日 京都嵯峨 [渡月橋 西山艸堂 松尾大社 心斎橋(泊)]

* 台風がいちどに2つ本州に近づいていて、出発の前の日に天気情報を見ていると飛行機が飛んでくれるかさえ心配になるほど。
さいわい飛行機は羽田から離陸し、ぶじに伊丹空港に着いて、レンタカーを借りた。

「嵯峨散歩」のコースをたどるつもりでいたのだが、雨が強くなりそうなので、山中に入って水尾方面まで行くことは諦める。
高速道路を使って嵐山に直行すると、1時間ちょっと、昼前に着いた。
渡月橋の近くのみやげもの屋の駐車場に車を置いた。
嵐が近づいていて閑散としているかと予想していたのだが、修学旅行の高校生が大勢いて、人通りが多い。


■ 渡月橋

渡月橋 渡月橋付近では、先月(2013年9月)に水があふれて旅館やみやげもの店が被害を受けた様子が、しばしばテレビに映っていた。
この日も渡月橋の下を濁った水がゴウゴウ勢いよく流れている。あふれそうではないが、あらあらしい。

須田剋太『嵯峨
須田剋太『嵯峨』

須田剋太のこの絵では、欄干の間から、川岸を歩く人が少なくとも9人見える。高層ビルから見おろしたかのように人が小さいが、渡月橋はそれほど高くない。

● 西山艸堂(せいざんそうどう)
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町63 tel. 075-861-1609

天龍寺の塔頭(たっちゅう)のひとつ「妙智院」の中にある湯どうふどころ。
『街道をゆく』「嵯峨散歩」では、嵯峨にある「森嘉」(もりか)の豆腐をめぐって長い記述があり、途中で「天龍寺の塔頭妙智院で湯豆腐を食っている」とある。

レンタカーで走って嵐山に近づいたあたりで、悪天候でも営業しているか携帯から電話して尋ねてみた。開いているとのことで、妻と2人分を予約してある。
通りは観光客が多くて歩きにくいほどなのに、西山艸堂につづく庭に入ると別世界のように静かになる。
西山艸堂(せいざんそうどう)

庭を眺める席につく。幾皿かの料理のあと、大きな土鍋に入った湯豆腐がきた。
ちょうど昼どきなのだが悪天候のせいか他に客はなく、僕と妻の2人きり。
そのためかあっという間にテーブルの上に皿が並び、メインの湯豆腐も運ばれる。さめないうちに食べなくてはと、かなりめまぐるしい。
車できているので酒を飲めないのが心残りだった。

* 僕は今夜は大阪にホテルを予約してある。
雨が強いので「嵯峨散歩」をすっかりめぐるのは諦めるとしても、湯豆腐を食べただけで大阪に向かうのも何だかなあ、という気がする。
嵐山に向かうときに通りかかって、駐車場がすぐ近くにありそうだった松尾大社にだけ寄ることにした。


■ 松尾大社
京都市西京区嵐山宮町3 tel. 075-871-5016
http://www.matsunoo.or.jp/index-1/index.html

「松尾大社に行きましょうか」
天龍寺を出たとき、須田画伯にそういった。松尾大社は、松尾山を背負って建っている。戦前ふうにいえば社格はきわめて高く、官幣大社だった。
「山頂にのぼるんですか」
 と須田さんに反問されて、ちょっと考えた。足に自信がない。
「山麓の神社だけにしましょう」 (『街道をゆく 26』「嵯峨散歩」司馬遼太郎)

僕らも雨のなかを来たので、山頂に行く気はまったくない。
それでもかろうじて傘がなくても歩けるほどに雨は弱くなってきている。

松尾大社の鳥居 須田剋太『松尾大社』
須田剋太『松尾大社』

鳥居をくぐって入る。榊の小枝を束ねたものが吊り下げてある。脇勧請(わきかんじょう)といって12束さげるものと、近くの案内板に説明がある。
30年ほど前に来た須田剋太の絵には描かれていない。そのころは下げていなかったのか、たまたまその時期下げていなかったのか。
あるいは須田剋太が鳥居を描いて榊を省略したか。

酒に縁がある神社で、酒樽が数段に積み上がっている。
僕がなじみがある高崎の達磨寺では、こんなふうに赤いダルマが積み上げられたところがある。

松尾大社の酒樽 須田剋太『松尾大社』
須田剋太『松尾大社』

本殿にお参りすると、神前結婚が始まるところだった。
賽銭箱の向こうに新郎新婦が向こうむきに腰かけていて、祝詞があげられ、三三九度の杯がかわされ、新郎新婦が誓いの言葉をよみあげる。
-と、ちょっとした長い時間ながめていた。思えばこのところ久しく結婚式にでたことがない。葬式はいくつかあった。僕がそのような年代になっているからか、世の中が少子高齢化しているからか。
なんにしても結婚式の晴れがましい気分はわるくない。

重森三玲の最終作になる庭園がある。
曲水の庭(写真左)、即興の庭、上古の庭、蓬莱の庭(写真右)と4つあり、それぞれに趣をかえて、見応えがある。
使っている石は四国の吉野川産の緑泥片岩という。
庭を囲む建物が庭の緊迫感に見合わず、ややありきたりなのが惜しい。

松尾大社、重森三玲、曲水の庭 松尾大社、重森三玲、蓬莱の庭

* 大阪に向かう。高速道路にのらずに走ると、途中、大山崎を通る。このあたりで桂川、宇治川、木津川が合流している。その先は淀川になって大阪湾に注ぐ。合流点としてはビッグネームの川がならぶスター級の地点で、この春に合流点を歩いた。そのときは南側=八幡市からアプローチした。向こう側=大山崎に渡るのはたいへんなのだなあと、大山崎側の岸を望んだものだった。今日はその大山崎の川べりの道を走った。(→[春の奈良めぐり-「奈良散歩」ほか])

暗くなりかけたころに大阪中心部に入った。
翌日は司馬遼太郎記念館と、その近くにあり須田剋太作品を展示する喫茶美術館に行った。
最終の第3日は、「神戸散歩」の地をめぐった。


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参考:

  • 『街道をゆく 26』「嵯峨散歩」 司馬遼太郎/著 須田剋太/画 朝日新聞社 1985
  • 2泊3日の行程 (2013.10/25-27)
    (→電車 -レンタカー …徒歩)
    第1日 伊丹空港-渡月橋…天龍寺・西山艸堂-松尾大社-大阪心斎橋(泊)
    第2日 …近鉄日本橋駅→河内小阪駅…司馬遼太郎記念館…喫茶美術館…八戸ノ里駅→大阪城公園駅…大阪城…大阪城ホール…大阪城公園駅→地下鉄日本橋…たこ梅…ホテルフィーノ大阪心斎橋(泊)
    第3日 …心斎橋駅→梅田駅…阪神梅田駅→阪神芦屋駅=芦屋市立美術博物館=阪神芦屋駅→三宮駅…マキシン…義一…南京町…英国館…阪急三宮駅→王子公園駅…横尾忠則現代美術館…BB美術館…阪神岩屋駅→三宮駅→神戸新交通ポートライナー・神戸空港